[ブースレポート]AIによるプラント保守の伝承

[ブースレポート]AIによるプラント保守の伝承

Clock Icon2024.06.21

はじめに

こんにちは大阪オフィスのよなです。
本記事は2024年6月20~21の2日間で開催されたAWS Summitのブースレポートです。

個人的にすごく面白い!と思ったブースについて書きたいと思います!
私の主観も結構入ってるのでその点はご了承ください。

概要

  • テーマ:IoT, 生成AI
  • ブースタイトル:「AIによるプラント保守の伝承」

Amazon Web Services ブログでも以下のブログが紹介されています。

一部、上記のブログより画像を引用させていただいております。

アジェンダ

プロセス製造業でどのように生成AIが活用できるのか?ということを製造現場を模したデモ機を用いて紹介されていました。
具体的には、ベテランエンジニアが持つノウハウをデータ化することで、新人や経験の浅いエンジニアもAIを使ってベテランのノウハウを活かすことができるという内容でした。

プロセス製造業に限らず、製造業や機器メーカーでも共通の課題を持っている企業は多いと思うので、幅広く参考になる内容だと思いました。

私自身クラスメソッドにジョインするまでは機器のメンテナンスなどに従事していたこともあり、とても興味を持てる内容でした。

デモの全体像

それではまずデモの全体像です。
以下の図と説明部分はAWSブログを引用させて頂いております。

  1. オペレータは現場から発報されたアラートを確認する。
  2. オペレータは生成AIチャットボットに問い合わせする。チャットボットは過去のレポートを元に原因・対処方法と、推奨される現場への確認アクションを応答する。
  3. オペレータは現地エンジニアにリモート通話で、AI から生成された応答を基に状況確認を依頼する。
  4. 現地エンジニアは実際の状況を確認後、対応作業を行う。もし原因究明や解決が困難な場合は、別途ベテランエンジニアに通話に入っていただく。
  5. 対処が完了した場合、原因や対処法などをレポートに記載し保存する。

デモンストレーション

トラブル発生

今回のデモでは
液体を水槽Aから水槽Bに送液する装置でトラブルが発生した場合のデモンストレーションが行われていました。

まずは異常状態として攪拌機にかかる電圧を下がることで期待する攪拌結果が得られい状況を作ります。
この異常な状態を検知してオペレータへアラートが発報されます。

次にオペレーターは異常が発生した原因を調査します。

ベテランと新人

原因調査のプロセスではベテランと新人に大きな差が生まれます。

ベテランは自身の経験から、エラーの原因、確認するべき点、確認方法、対処方法、対処の優先順位などを頭の中で想像しながら効率よく作業を行います。
対して新人はエラー内容をマニュアルで調べて、確認箇所を調べて、確認の方法を調べて...というように一つずつ「探す、調べる」という行為が発生します。

通常、機器は複数の部品の組み合わせで構成されています。
そのため、多くのマニュアルやメンテナンスログと睨めっこしながら1つずつ原因を潰していくのは非常に時間がかかる作業です。

生成AIを活用した原因調査

そこで生成AIが活躍します。
生成AIを用いて蓄積されたノウハウというデータベースを自然言語で検索できるようにします。
具体的にはRAGを使ってマニュアルやメンテナンスログなどを検索することで、AIがあたかもベテランエンジニアのアドバイスのような回答をしてくれます。

今回のデモでは下の画像のように、エラー内容から考えられる原因、過去に同じエラーが出た際の対処方法などが出力されていました。

これってめちゃくちゃすごいことなんです!!
実際にマンパワーでこの情報を揃えるには、

  • エラー内容をマニュアルで探す
  • 過去のメンテナンスログから似た症状が発生していないか探す
  • 過去の解決方法から最適な解決方法を探す
  • 対処方法の手順を調べる
  • 他の要因がないか調べる

などなど、他にも考えるべきことは多岐にわたります。

私も以前、機器のエンジニアとして働いていた時は、分厚いキングファイに挟まれたメンテナンスマニュアルと過去のメンテナンスログから可能性の高そうな箇所を探すことにかなり時間を取られることがありました。
これを自然言語で解決できるなんて感動しますよね!

トラブルシューティング

次に生成AIの回答を元に現場の作業者へ指示を出します。
ここのオペレーションは今まで新人がベテランに聞く。というフローとあまり変わらないように思います。
しかし、ベテランの時間を割かなくても解決できる可能性があるというのはお互いにとって非常に良いことですね。

また、トラブルが1度で解決しないことも多いので、そこでもAIを使って自然言語で解決までの手助けをしてくれるのはありがたいですね。

トラブル解決後は必ず確認作業がつきものです。
確認作業に関してもマニュアルや過去の作業履歴を参考にステップバイステップで教えてくれると作業の効率化につながると思います。

今回のデモでは遠隔でオペレータが指示をする想定でしたが、現場の人が生成AIを使って作業するというようなケースでも活躍しそうですね。

デモの中でも解説がありましたが、新人+AIでは解決できずにベテランに頼って解決できた場合でも、そのデータを残すことで次回以降にAIが参照するデータソースになります。
このように、新たな情報もどんどんデータとして残すことで将来的な作業効率化につながります。

感想

ベテランと新人を比べましたが、たとえベテランエンジニアでも情報を探すのには時間がかかるものです。
その調べるという行為を短縮できるのは誰にとってもメリットになるのではないでしょうか。

ただし、こういったAIの活用にはソースとなるデータが不可欠です。
そのために以下のことが非常に重要だと思います。

  • エンジニアがなるべく手間をかけずに作業データを保存できる仕組み
  • ベテランのノウハウを言語化、データ化する
  • 紙ベースのデータをAIのデータソースとして使える形式に変換する

まだまだ現場ではベテランの頭の中にのみ貴重な情報がある状態や、紙ベースで情報が管理されていてデータとして扱えないケースも多いのではないかと思います。

昨今はエンジニアの確保も難しくなってきているので、技術を活かしてひとりひとりの作業効率を上げていくことが求められているように思います。
そのめにも、まずは活用できるデータを蓄積して、うまく利用していくことが重要だと改めて感じました。

全体を通してとても楽しく、今後こういった技術が増えてくることが期待できるとてもいい内容でした!

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